Under the Rose(10巻)の感想です。
10巻の感想
とある伯爵一家の華麗なる生活を読みたいがために10巻まで読み続けましたが、10巻で自分が何を読んでいたのか分からなくなりました。
あまりにも夢の中で生きるアンナの描写が強烈で、精神病者の漫画を見ているような錯覚を起こすからです。本編の恐ろしい結末は、10巻表紙のお化けのような虚ろなアンナの姿が全て物語っています。
本編に優雅さなんて一切なく、一人の人間がどうやって狂い堕ちて、壊れていくのか、その過程がひたすら丁寧に描かれているのです。
アンナを病気だと責める家族の糾弾の仕方もとてもリアルです。
どうして一人の女性をここまで追い詰める必要があったのかとさえ思います。ですが、これもまたこのドロドロしたロウランド伯爵家の一つなのだと思うと、避けて通れない展開だったのかもしれません。
本編は表紙のアンナのように強烈でしたが、唯一の癒しは雪だるまを作る子供たちの描写が相変わらず愛らしく描かれていることでした。
子供たちの動きを、言動を、ここまでリアルに描けるのは10巻経っても変わらず素晴らしいと感じました。
アンナの実子だというのに、ロレンスよりも待遇が悪いことに気づいてしまったときのグレゴリーの戸惑う描写もとても子供らしく、良かったです。
前巻のあらすじ
9巻のあらすじです。
19世紀後期の英国。館へと戻ったロウランド伯爵は、彼の『家族』すべてが集うクリスマスディナーに、家庭教師レイチェルの同席を許す。教え子たちの笑顔を喜ばしく思うレイチェルであったが、伯爵の思いがけない宣告に動揺する。それは、終わりの始まり。虚飾と過ちの清算を伯爵は決意していたのだ。そして、レイチェルは怯える。無知故に綻びを招く発端となってしまった己の咎に――。
(引用:https://www.cmoa.jp/title/40562/vol/9/)